令和6年度、香川県地域包括ケアシステム学会が運営する「地域包括ケア部会」は香川県からの委託を受け、「認知症予防プログラム開発・実証事業」を展開しました。
地域や自治体全体で認知症の予防や進行防止に取り組むことは、個人の健康維持だけでなく、社会全体にとっても多くの利点があります。特に、MCI(軽度認知障害)の早期発見と予防プログラムの開発には、以下のような重要な意義があります。
- 認知症の発症・進行を遅らせる
MCIの段階で適切な介入を行うことで、認知症の発症を遅らせたり、防いだりできる可能性があります。運動、栄養、社会参加、認知トレーニングなどの介入が、MCIの改善や認知機能の維持に有効であることが研究で示されています。
- 本人や家族の負担を軽減
早期に対応することで、本人の生活の質(QOL)を維持しやすくなります。
認知症が進行すると介護負担が大きくなるため、家族や介護者の負担を軽減できます。
- 医療・介護費用の削減
認知症の進行を遅らせることで、長期的な医療・介護費の増加を抑えることができます。予防プログラムにより、認知症の発症率を下げることができれば、社会全体の医療・介護システムの持続可能性を高めることができます。
- 地域全体の健康促進
認知症予防に関連する活動(運動、栄養指導、社会交流の場の提供など)は、地域全体の健康増進にもつながります。高齢者だけでなく、若い世代にも健康意識を広げることができます。
- 地域コミュニティの活性化
認知症予防の取り組みを通じて、住民同士の交流が深まり、孤立を防ぐことができます。認知症に対する理解が進み、地域ぐるみで支え合う体制が強化されます。
- 科学的エビデンスの蓄積と新たな介入方法の開発
香川県全体のデータを収集し、効果的な予防プログラムを開発・改善することで、全国的なモデルケースを作ることができます。
小豆郡医師会理事、大城智睦先生をリーダーに、24名の多職種メンバーからなるワーキンググループを設置、6種類の講義資料を制作し、坂出市の協力を得て認知症予防プログラムの実証を行いました。その後、 それぞれの講義の反響と反省を基に、資料のブラッシュアップを進めました。
今後、香川県内で多くの自治体が認知症予防や早期発見に取り組むための参考になることを期待しています。
■事業実施内容・成果
下記に報告書を掲載いたします。事業成果についてはこちらをご覧ください。
報告書
・ワーキンググループ(WG)開催:WGを計5回開催した。構成員は次ページのとおり。講義資料の作成方針として、疾患としての認知症の医学的な説明に加えて、認知症の予防を分かりやすく解説すること、認知症予防のための生活行動を習慣化するための宿題や健康チェックシートを利用する内容とすることになった。
・認知症予防プログラム講義用資料作成:6つのテーマについて、それぞれ30分間の講義となる資料をWG構成員で分担して作成した。①認知症の基礎知識②栄養と認知症③口の健康と認知症④薬と認知症⑤難聴と認知症⑥運動と認知症。
・認知症予防プログラム実証:坂出市の協力を得て、2ヶ所の会場で約4か月間(2週間に1回)で各8回のプログラム実証を実施した。講師からの報告書、参加者および地域包括支援センタースタッフのアンケート結果を踏まえ、講義資料を一部修正し、最終稿とした。